高金利通貨が人気の理由🚀

あらすじ
・政策金利の低い日本円と高金利国の通貨とのペアは、高いスワップポイントを得られる「高金利通貨ペア」として一定の人気がある
・高金利通貨ペアの主なメリットは、金利差による利益の追求やポートフォリオの多様化など
・高金利通貨ペアのリスクは、為替相場の変動リスク、金利差の縮小や逆転リスクなどがある
・日本人に人気のある高金利通貨ペアは、メキシコペソ/円や南アフリカランド/円、トルコリラ/円が挙げられる
~ 第1章 ~
高金利通貨と人気の理由
高金利通貨とは、高い金利水準を保った国の通貨だ。つまり、政策金利が高い国の法定通貨ということである。政策金利とは、中央銀行が一般の銀行に貸し付ける際の金利だ。日本では低金利が長らく続いていることから、日本人にはなじみが薄いかもしれないが、世界には政策金利が10%を超えるような国も存在している。
FXで得られる収益には、「相場の変動にともなう為替差益」と「2か国間の金利差に応じて日々付与されるスワップポイント」の2種類がある。為替差益とスワップポイントのどちらを求めるのかによって、選ぶべき通貨ペアは基本的に異なってくる。
まず、為替差益を追求したい場合は、トレンドが現れやすい通貨ペアや情報が豊富で分析しやすい通貨ペアなどが選ばれやすい。方向性を掴みやすいという意味では、例えば米ドル/円やユーロ/円などが挙げられる。
一方、スワップポイント狙いの取引であれば、日本よりもはるかに高金利の国の通貨がターゲットだ。2023年6月7日現在における主要な高金利国の政策金利を見てみると、南アフリカが8.25%、トルコが8.5%、メキシコが11.25%となっている。日本はマイナス0.1%という状態が長く続いており、その差は非常に大きい。
各国の政策金利には違いがあるため、通貨ペアによっては得られるスワップポイントが大きくなるものがある。金利差を活用するために取引される通貨ペアは「高金利通貨ペア」と呼ばれ、特に政策金利の低い日本円と南アフリカなどの高金利国の通貨とのペアは、高いスワップポイントを得られるとして一定の人気がある。
〜 第2章 ~
高金利通貨ペアのメリット
高金利通貨ペアのメリットの一つは、金利差による利益の追求ができることだ。要するに、スワップポイントで利益を狙えるということである。
各国の中央銀行は経済の安定や通貨の価値を維持するため、政策金利を設定する。通常、経済が好調である場合、中央銀行は金利を引き上げる傾向にある。一方、経済が低迷している場合、金利を引き下げることが多い。
高金利通貨ペアでは、この政策金利の高い通貨を購入し、政策金利の低い通貨を売却することで金利差から利益を得ることを狙う。例えば、通貨Aが高金利通貨であり、通貨Bが低金利通貨だとしよう。この場合、投資家は通貨Aを購入し、同時に通貨Bを売却することで金利差から利益を得ることが可能だ。
金利差による利益は、ポジションを保有している期間に応じて発生する。通常、ポジションを保有する期間が長ければ長いほど、利益も増えることになるため、短期的な利益ではなく、コツコツと着実に利益を積み上げたいという人に向いていると言えるだろう。もちろん、為替相場の変動による利益を同時に得ることも可能である。
高金利通貨ペアのもう一つのメリットは、ポートフォリオの多様化だ。投資家はリスクを分散させるために、複数の資産クラスや通貨に投資することが一般的である。高金利通貨ペアを取引することで、投資家はポートフォリオを多様化することができ、リスクを分散し、安定した収益を追求することができる。
〜 第3章 ~
高金利通貨ペアのリスク
一方、高金利通貨ペアにはいくつかのリスクも存在する。まずは、為替相場の変動リスクだ。為替相場は非常に変動しやすく、経済や政治的な要因が通貨の価格に大きな影響を与える。
したがって、高金利通貨ペアの価格もその変動から、予測困難な為替リスクが生じることになる。為替相場の変動によって利益が得られる場合もあれば、損失が発生する場合もあるだろう。
高金利通貨には流動性リスクもある。FXにおける流動性とは、その通貨がどれだけ取引されているかである。
ドルやユーロ、円などの多くの人が取引している通貨の取引は、流動性の高い取引になる。しかし、新興国の通貨は市場参加者が少なく流動性が低くなるため、自分が取引したいタイミングで取引が成立しない場合があるのだ。
そのため、希望した価格で取引できない、利食いや損切りが迅速にできないといったことが発生しやすくなる。
さらに、金利差の縮小や逆転リスクも考慮する必要がある。金利は経済の状況や中央銀行の政策によって変動するため、金利差も当然変動することになる。金利差が縮小したり逆転したりすると、金利差からの利益が減少したり、損失が発生したりするリスクがある。
最後に、地政学的リスクだ。地政学的リスクとは政治的、軍事的緊張の高まりから経済の先行きが不透明になるリスクのことを言う。
高金利通貨はこの地政学的リスクが高いことが多いという特徴がある。例えば、トルコはエルドアン大統領の影響力が非常に高く、大統領選の結果を受けてトルコリラの急落が起きた。また、イランやイラク、シリアなどの国が周辺にあることから、周辺国の戦争や内戦の影響も受けやすい。
地政学的リスクが高まれば、通貨の乱高下や原油・天然ガスなどの高騰を招く可能性がある。
投資には常にリスクがともない、高金利通貨ペアも例外ではない。投資を行う際には、リスクを最小限に抑えるために慎重なリスク管理が必要になってくる。
投資家は十分な情報収集と分析を欠かさないようにすることが、リスク管理に極めて重要だ。経済指標や政治的なイベント、中央銀行の発表など、市場に影響する要素を注意深くチェックしてほしい。また、リスク管理ツールの活用や適切なポジションサイズの設定も大切だ。
初心者の場合は、まずデモトレードやリスクの少ない少額での取引から始めるとよいだろう。これによって、実際の資金や大きな資金を投入する前に取引ツールの操作や高金利通貨ペアを活用した取引戦略のテストを行うことができる。
また、経験豊富なトレーダーや専門家のアドバイスを活用するのもよい。彼らは長年の経験を持っており、有益なアドバイスや取引戦略を提供してくれるはずだ。
~ 第4章 ~
代表的な高金利通貨ペア
高金利通貨ペアのメリットやリスクが分かったら、代表的な高金利通貨ペアについて見てみよう。高金利の国は新興国が多く、日本人に高金利通貨として人気がある通貨も新興国の通貨だ。
日本人に高金利通貨人気のある高金利通貨は、新興国通貨のメキシコペソ、南アフリカランド、トルコリラなどが挙げられる。これらの通貨に日本円を組み合わせた通貨ペアが、高金利通貨ペアとしてよく取引されている。
メキシコペソ/円
2023年6月7日現在、メキシコの政策金利は11.25%と非常に高く、高金利通貨ペアとしての人気も高い。さらに、同じ高金利通貨のトルコリラや南アフリカランド等と比較して流動性が高いことから、値動きも高金利通貨ペアの中では安定している傾向がある。
また、メキシコは産油国として有名な国だ。原油価格が上昇すると、メキシコの通貨であるメキシコペソも上昇しやすいという特徴がある。世界的なインフレの進行やロシアのウクライナ侵攻などの要因により、原油価格が再度上昇するようなことがあれば、メキシコペソも上昇しやすい環境になるだろう。
さらに、日本は金融緩和を継続しており、世界とは逆行した金融政策を行っている。つまり、日銀が現在のスタンスを維持し続ける限り、日本円が売られやすい地合いが続く可能性がある。
ただし、原油価格が下落すればメキシコペソも下落しやすくなるため、原油の価格動向には注意する必要がある。そのため、メキシコペソ/円が下落したタイミングでロングポジションを保有する取引戦略が、選択肢の一つとして考えられるであろう。
南アフリカランド/円
2023年6月7日現在における南アフリカの政策金利は8.25%であり、メキシコペソやトルコリラと並んで国内投資家の間で高金利通貨ペアとして人気が高い。発展途上にある南アフリカは恒常的なインフレ上昇圧力にさらされており、先進国に比べて金利が高い傾向がある。
マイナス金利政策を推し進める日本とは対照的であり、この金利差にあたるスワップポイントを狙って、南アフリカの通貨であるランドを保有する国内投資家は多い。要するに、南アフリカランド/円のロングポジションということだ。
南アフリカはかつて「アパルトヘイト」と呼ばれる人種隔離政策を取っていたが、撤廃後の民主政権発足により、現在ではアフリカ最大の経済大国に生まれ変わっている。アフリカ大陸の中で唯一のG20参加国であり、今後成長が期待される新興国としてBRICS(経済成長著しいブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5か国をさす造語)の一角にも挙げられている。
南アフリカは資源大国として知られており、金やダイヤモンド、プラチナといった鉱物資源が豊富だ。特に金は重要な輸出品の1つであり、かつては世界一の産出量を誇っていた。また、ガソリン車から電気自動車(EV)への転換で需要が増えているレアメタルの埋蔵量も多く、資源価格の上昇が南アフリカランドの上昇につながる傾向がある。
ただし、南アフリカランドは市場の流動性が低いことから、荒れた値動きを見せることがあり、資源価格や南アフリカの金融政策・経済指標の変化に注意しつつ、ロスカットされないような資金管理を行う必要があるだろう。日本と南アフリカの金利差を考えると南アフリカランド/円を買いで保有することで得られるスワップポイントは魅力であり、下値を拾いながら時間を味方につける戦略がおすすめだ。
トルコリラ/円
2023年6月7日現在におけるトルコの政策金利は8.5%となっており、メキシコには及ばないが南アフリカよりも政策金利が少し高い。通貨であるトルコリラは高金利通貨として知られており、スワップポイント狙いでトルコリラを保有する投資家も多い。
トルコは海外からの投資マネーの流入を拡大させるため、政策金利を高く設定している。そして、市場の流動性が低いことから、米ドルやユーロ、ポンドなどの主要通貨と比べると価格が不安定であり、ボラティリティが高いという特徴もある。
ただし、トルコはインフレ率が非常に高く、政策金利が上がったとしてもトルコリラの大幅な上昇は期待しづらい。例えば、IMFによると2022年のインフレ率は約72%だ。2023年のインフレ率は2023年4月時点で約50%と推計されているが、それでも非常に高い。
また、エルドアン大統領の発言にも注意が必要である。2023年5月にトルコ大統領選挙の決選投票で当選し、再選を果たしたエルドアン大統領だが、非常に高い影響力を持っている。
過去には大統領が中銀副総裁らを解任し、通貨安や低金利を容認したことが原因となり、トルコリラ安が加速したことがある。エルドアン大統領の発言により、トルコリラが急騰したり急落したりするリスクは頭に入れておいた方がよいだろう。
トルコリラを取引するのであれば、政策金利の差を考えるとトルコリラ/円がおすすめだ。トルコリラは値動きが激しい傾向があるため、スワップポイントに加えて大きな為替差益を狙うこともできる。しかし、急落した時のリスク管理として、十分な証拠金維持率やストップ注文を活用することも重要である。
このシリーズはNewsweekやForbesなどの掲載経験、
加えて日経CNBCにアナリストとしての出演経験を持つ
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