FXにおけるAIの役割と可能性🤖

この記事は、AI技術の進歩が外国為替(FX)取引にどのような影響をもたらしているかに焦点を当てています。特に機械学習と自然言語処理技術の進化により、取引の予測精度や効率が向上している一方で、新たな課題やリスクも生まれています。また、ChatGPTのような技術がプログラミングの自動化に貢献する可能性も探っています。しかし、完全な自動化は現段階では困難で、人間の判断が重要であると述べています。最後に、AIと金融の交差点には無限の可能性があるが、リスク管理と新しい規制の枠組みが必要であると結論付けています。
Published at: 2023年10月11日 18:54

あらすじ

・近年のAI技術は目覚ましい進歩を遂げており、さまざまな分野に大きなインパクトを残している。

・今まで金融業界でメインとなっていたAI技術は機械学習による膨大なデータ分析と精度の高いパターンの創出だった。

・2022年11月にリリースされたChatGPTにより、自然言語処理能力もFX取引に大きな影響を与えつつある。

~ 第1章 ~

近年のAI技術の進化

近年、AI技術の進化は目覚ましい。データ分析からロボット工学、医療、エンターテイメントまで、手が出せる分野は多岐に渡る。人工知能(AI)の技術は、生活のさまざまな側面を変え、多くの産業に革新をもたらしている。特に、高度に定量化された金融業界は、AIが積極的に取り入れられ、大きな影響を受けているといえるだろう。

AIの基本的な概念

AIは、機械に人間と同等またはそれ以上の知能を実現するための技術であり、認知タスクの自動化、学習、問題解決などを可能にする。

AIの主なカテゴリには、機械学習、深層学習、自然言語処理などがある。機械学習は、機械が人間の介入なしにデータから学習する技術であり、外国為替市場の予測や分析に広く使用されている。深層学習は機械学習の一部で、複雑なパターンを認識し、分類する能力を持つ人工ニューラルネットワークを使用するものだ。また、自然言語処理は、AIが人間の言語を理解し、解析する能力を指している。

自然言語処理(NLP)の進化

3つの能力のなかでも、近年では自然言語処理(NLP)の進化が目覚ましい。コンピュータが人間の言語を理解し、それに応じて文章を生成する技術が大きく進んでいる。

特に最先端のNLPモデルである「GPT-4」の性能は、人間の書いたものと見分けがつかないほど。この技術の進化はヘルプデスクの自動化や情報の要約、メールの自動生成など、さまざまなビジネス領域で活用されている。

機械学習(ML)の躍進

機械学習(ML)の分野もまた大きな進歩を遂げている。MLはAIがデータからパターンを学び、新たな情報を元に自己改善をする技術で、深層学習や強化学習の進化により、AIの学習速度は飛躍的に向上している。この技術は自動運転車のナビゲーションやロボットが新環境に対応する能力向上に寄与している。

〜 第2章 ~

機械学習が金融業界に与えてきた影響

為替相場を予想するには、過去の膨大なデータを読み込み、そこからパターンを見つけ出すというのが王道の手法だ。AIによる機械学習を使えば人間では扱いきれない量のデータを分析し、より精度の高いパターンを見つけ出すことが可能となる。

高度な予測モデリング

金融業界で取り入れられてきたAI技術の1つとして、高度な予測モデリングがあげられる。株価の予測はこの代表例といえるだろう。過去の株価データ、業績レポート、業界の動向、マクロ経済指標など、様々な変数を組み合わせて使用することで、機械学習モデルは未来の株価を予測する。これらの予測は、投資家がポートフォリオのバランスを調整し、投資のリスクを管理するのに役立っている。

また、「クレジットスコアリング」も予測モデリングの1つとしてあげられるだろう。機械学習は、個人の信用情報、雇用履歴、収入などの情報からクレジットスコアを予測するのにも使用されてきた。これは銀行や金融機関がローンを承認するか否かを決定する際の重要な情報となっている。

加えて、機械学習モデルは、経済指標、政策変更、その他のマクロ経済要因を分析し、市場全体のトレンドを予測するのにも活用されている。利益追求だけでなく、特定の投資や取引がどの程度のリスクを伴うかを評価する指標ともなるのだ。

これらの高度な予測モデリングの手法は、大量のデータを迅速に処理し、高度な数学的アルゴリズムを使用して複雑なパターンや関係性を特定する。しかし、それらの予測は100%正確ではなく、あくまで予測に過ぎないということを理解することが重要だ。

予測モデルは過去のデータに基づいているので、未来の予測は過去のパターンが続くことを前提とする。そのため、予測が必ずしも当てはまるわけではなく、市場の変動や外的要因が予測を覆すことがある。

機械学習による自動化取引

金融業界の自動化取引は、高頻度取引とアルゴリズム取引の二つの形で進んでいる。どちらも機械学習の技術が使われて、取引を速く、効率的にしている。

高頻度取引は、ほんの一瞬で大量の取引をすることが特徴だ。主に電子取引プラットフォームを通じて行われ、コンピュータのアルゴリズムが取引のタイミングや価格、数量を決める。高頻度取引は、市場の微小な価格差を利用して利益を出す。そのために、リアルタイムの価格データを分析し、すぐに取引を行う。機械学習のアルゴリズムは、市場の動きを予測して、高頻度取引の戦略を最適化するために使われている。

アルゴリズム取引は、取引戦略を実行するための一連の指示をコンピュータが自動で行うものだ。これには、特定のタイミングで取引を始めたり終えたり、特定の価格で取引を実行したり、大量の取引を小さく分割して市場への影響を最小化したりするなど、さまざまな形がある。機械学習を使うと、アルゴリズム取引はもっと高度になり、取引戦略をリアルタイムで調整したり、市場の変化に合わせて変化したりできるようになる。

自動化取引の利点は、取引のスピードと効率性の向上、人間の感情やバイアスから解放されること、市場の流動性が上がることだ。しかし、問題もある。自動化取引が市場を急に変動させる可能性があり、「フラッシュクラッシュ」という現象も起こることがある。さらに、取引アルゴリズムがプログラムのバグや予期せぬ市場の動きにどう対応するかは恒久的な問題となるだろう。自動化取引が増えると、市場参加者間の技術差が広がり、公平性の問題が起こるかもしれない。

〜 第3章 ~

ChatGPTが引き起こしたAIの波

2022年11月にリリースされ、さまざまな分野に大きな影響をあたえているChatGPT。今までのAIとは一線を画すそのテクノロジーは、AIの専門家だけでなく、一般の人にまで広く活用されている。

自然言語処理の活用を一般化した新しいテクノロジー

ChatGPTが今までのAIと大きく異なる点は、「まるで実際の人間と会話しているような高度な言語処理能力」にある。今までのAIは事前にプログラムされたルールに基づいて返答を作成するため、どうしても「ロボット感」が拭い去れなかった。しかしChatGPTは実際に人間が応答していると言っても不自然では無いレベルまで、言語処理能力を向上させたのである。

ChatGPTによるFX取引の可能性

質問されたことに対してただ返答するだけのChatGPTが、どうやってFX取引に介入するのか疑問に思う読者もいることだろう。実は、ChatGPTは今までのFX取引を一新するだけの秘めた力を持っている。

FX取引で自動売買を行う際に使うのがEA(エキスパートアドバイザー)だ。EAはMT4では「MQL4」というプログラミング言語を、MT5では「MQL5」というプログラミング言語を使用している。

MQL4やMQL5を使ったプログラム作成をChatGPTに投げ掛ければ、自由自在にEAを作成することが可能となる。

例えば、「MQL4で移動平均線を使ったプログラムを組んでください」という指示をChatGPTに問いかけてみよう。すると下記のような返答が得られる。

▶️「MQL4で移動平均線を使ったプログラムを組んでください」に対する返答

MQL4で移動平均線(MA)を使ったプログラムを作成します。これは、簡単なMoving Average Crossover EA(Expert Advisor)で、高速MAが低速MAを上回ったときに買い、反対に高速MAが低速MAを下回ったときに売ります。

mql4

Copy code

//+------------------------------------------------------------------+

//|                                                  MovingAvgEA.mq4 |

//|                                                                  |

//|                                      |

//+------------------------------------------------------------------+

#property copyright "Copyright 2023, OpenAI"

#property link      "https://openai.com"

#property version   "1.00"

#property strict

extern int FastMAPeriod = 5; // 高速MAの期間

extern int SlowMAPeriod = 10; // 低速MAの期間

int start()

{

   double FastMA = iMA(Symbol(), 0, FastMAPeriod, 0, MODE_SMA, PRICE_CLOSE, 1); // 高速MA

   double SlowMA = iMA(Symbol(), 0, SlowMAPeriod, 0, MODE_SMA, PRICE_CLOSE, 1); // 低速MA

   double PreviousFastMA = iMA(Symbol(), 0, FastMAPeriod, 0, MODE_SMA, PRICE_CLOSE, 2); // 一つ前の高速MA

   double PreviousSlowMA = iMA(Symbol(), 0, SlowMAPeriod, 0, MODE_SMA, PRICE_CLOSE, 2); // 一つ前の低速MA

   // 高速MAが低速MAを上回ったときに買い

   if (FastMA > SlowMA && PreviousFastMA < PreviousSlowMA)

   {

       OrderSend(Symbol(), OP_BUY, 1, Ask, 3, 0, 0);

   }

   // 高速MAが低速MAを下回ったときに売り

   else if (FastMA < SlowMA && PreviousFastMA > PreviousSlowMA)

   {

       OrderSend(Symbol(), OP_SELL, 1, Bid, 3, 0, 0);

   }

   return(0);

}

//+------------------------------------------------------------------+

このEAは高速MAと低速MAの間でクロスオーバーが発生したときにトレードを開始します。上記のコードはシンプルな移動平均線クロスオーバーシステムを示していますが、ストップロス、テイクプロフィット、マネーマネジメントルールなど、実際の取引で利用する際には多くの重要な要素が欠けています。実際の取引に使用する前に、これらの要素を追加することを強く推奨します。

この返答を作成するまでにかかった時間はおよそ10秒。「今まで培ってきた技術は何だったのか…」とプログラマーが嘆く姿が眼に浮かぶほどのスピードでEAのプログラムができてしまう。

まだ実用できるレベルではない

ただし、ChatGPTは「ただそれっぽい回答」を作成しているだけであって、実用できるほどの精度の高さはない。作成されたコードをメタエディターに貼り付けてコンパイルできるかどうか確認してみると、やはりエラーが発生した。つまり、現状は人が介入する余地が残っているということになる。

ChatGPTの現在の機能はまだ完全にユーザーのニーズを満たすに至っていない。特に、ユーザーがEAの作成を思い通りに行うことは困難だ。しかしながら、近い将来、プログラマーの存在なしでもEAを始めとする様々なシステムの開発が可能になる日が訪れると確信できるだろう。

~ 第4章 ~

AIが将来的にFX市場に与える可能性

AIのさらなる発展と適用は、FX取引のパラダイムを変える可能性がある。AIの予測能力の向上は、市場の効率性を高め、より安定した取引環境を提供することで、投資家に利益をもたらす可能性があるといえるだろう。

新たな市場のダイナミクスを生み出す可能性

AIによる自動取引の増加は、市場参加者の行動や戦略に影響を与え、新たな市場ダイナミクスを生み出すかもしれない。しかし、AIが一部の市場参加者に過度な優位性をもたらすと、市場の公正性が損なわれる可能性も考慮しなくてはならない。

AIによるフラッシュクラッシュの可能性

AIの自動化と最適化が進む一方で、AIの決定が市場の極度の不安定性を引き起こす未来も想像されている。例えば、AIが同じようなトレンドを同時に認識し、一斉に売買を行った場合、市場は急激な変動を経験するという事態になりかねない。このような「フラッシュクラッシュ」は、市場の安定性を損なう大きなリスクとなる。

デジタル・ディバイドとAIの役割

現在、金融市場ではAI技術の進歩が顕著に見られるが、その活用度合いは参加者によって大きく異なることから、新たな形のデジタル・ディバイドが生じている。特に、欧米のヘッジファンドなどでは何年も前からAIを駆使した定量分析やその他の金融工学の手法が広く採用されている。これにより、これらの組織は大きな投資を行い、AIの強力な分析能力を活用して取引戦略を練ることが可能になり、結果として個人投資家との間に優位性の格差が生じているのが現状だ。

この現象は、高度なテクノロジーと専門知識を活用することによって得られる利益を、一部の参加者だけが享受している状況を示している。AI技術の適用には技術的なスキルと高度な知識が必要となるため、その恩恵を受けるのは一部の市場参加者に限られてしまう。その結果、市場の公正性が損なわれる可能性があり、個人投資家との間の格差が拡大する未来も用意に想像できるだろう。

ありとあらゆる事態を想定してリスクに対応することが重要

AIはまだ成熟していないテクノロジーであって、今後どのような未来がくるか予想ができない。10年前に、ChatGPTのような驚くべき自然言語処理能力を持ったAIが登場する未来を予想できた人がいただろうか。

FXをギャンブルとして利用するのであれば話は変わってくるが、投資として認識しているのであれば、いつでもリスク管理が最も重要である。この原則は今も昔も、そしてAIが発達しているであろう未来においても変わらない。

ただし、現時点でChatGPT等のAIでの完全なる相場予測は不可能なので、AI頼みのリスクテーキングはできず、売買の決定は依然として人間の判断次第だ。

進歩する技術に適応するために日々情報収集を怠らず、リスク管理スキルを身につけることが今できる最も有益な行動といえるだろう。

~ 第5章 ~

まとめ

AIと金融の交差点には、無限の可能性がある。FX取引におけるAIの役割は、予測精度の向上、取引効率の増大、リスク管理の強化といった多方面に及んでいる。

しかし、その一方で、AIの適用は新たな課題をもたらすだろう。そのため、投資家、規制当局、そして技術者たちは、AIの利点を最大限に活用しつつ、潜在的なリスクを管理するための新たなフレームワークと規制を考える必要があるのだ。

AIがFX取引にどのような影響を与えるかは、まだ完全には分かっていない。しかし、間違いなく、AIは私たちが金融市場を理解し、利用する方法を大きく変えるだろう。

このシリーズはNewsweekやForbesなどの掲載経験、

加えて日経CNBCにアナリストとしての出演経験を持つ

元デリバティブディーラーが発信するメルマガです。

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