アメリカの銀行が次々と破綻 🏦

この記事の抜粋は、シリコンバレー銀行とシルバーゲート銀行の破綻に焦点を当てており、これらの銀行がハイリスクな顧客をターゲットにしていたこと、特に仮想通貨関連のサービスを提供していたことが、破綻の一因であるとしています。また、金利の急上昇と仮想通貨市場の不安定性がこれらの銀行の資金繰りに悪影響を与え、最終的には破綻につながったことが述べられています。最後に、アメリカの大手銀行はこれらの小規模かつ特殊な状況から影響を受けていないが、ヨーロッパの株市場や他の銀行には影響が見られると指摘しています。
Published at: 2023年10月11日 18:47

主役

【シルバーゲート銀行】

仮想通貨系の企業を専門とした銀行。

Facebook社(現Meta社)の仮想通貨「Diem」の技術と権利を所有。

2022年末時点の預金総額は約8600億円。

【シリコンバレー銀行】

ベンチャー企業を主に顧客とする銀行。

米国ベンチャー企業の半分近くを顧客にしていた銀行

アメリカ以外にも多くの中国系ベンチャー企業の銀行。

総預金額は約22兆9,170億円。

あらすじ

・アメリカの銀行として第16位の規模を誇るシリコンバレー銀行が破綻。

アメリカ史上2番目に大きな銀行破綻、2008年のリーマンショック以降に破綻した銀行としては最大規模。

・アメリカの銀行として第29位の規模を誇るシグネチャー銀行も破綻。

・これ以上の連鎖を止めるために地方銀行の「ファースト・リパブリック・バンク」「ウェスタン・アライアンス・バンコープ」「パックウェスト・バンコープ」の株が取引停止。

第1章 

〜背景 📖〜

シリコンバレー銀行、シルバーゲート銀行、シグネチャー銀行は大手銀行が避けるような非常にハイリスクなお客を専門としていた。

シルバーゲート銀行

1998年設立のシルバーゲート銀行は2016年から仮想通貨業界に銀行サービスを提供し始め、急成長した。

仮想通貨は犯罪に使われることが多く、監査が非常に困難なうえ費用もかかるため、普通の銀行は取り扱いを避けていたが、シルバーゲートはこの隙間に目をつけ金融サービスの提供を開始する。

その中で最も重要な顧客がFTX(2022年に倒産し、大規模な詐欺が明らかになった仮想通貨プラットフォーム)であり、多額の現金をシルバーゲート銀行に預けてあった。

*シルバーゲートはFTXの投資詐欺を助長したとも言われている。

シルバーゲート銀行の主要サービスは「暗号通貨取引所」「機関投資家」「富裕層」が仮想通貨を紙幣に両替できるSilvergate Exchange Network(SEN)だった。それに加え、ビットコインを担保として預け入れることで紙幣を借りれる、といった融資サービスも提供していた。

これらのサービスは実際には収益を生んでいたが、預かっていた仮想通貨の価値が失われないことに依存していた。2022年3月〜2022年末にかけてビットコインが約70%下落したのに伴い、パニックが起こり、預金を預けていたお客が一斉に資金を引き出そうとした。

2022年9月から12月の三ヶ月で$80億ドルの出金が顧客に要求されるが、2016年からの利益を合計しても$20億にも満たない。

出金要求額をカバーするためにシルバーゲートは資産の売却を強要された。

シリコンバレー銀行

シリコンバレー銀行はベンチャー企業やベンチャー系ファンド(VC)を主な顧客としており、Sequoia Capital、Ribbit Capital、Spark Capital、Greylockといった世界トップのVCに直接投資する「投資家への投資家」とも呼ばれていた。

さらには「ベンチャー融資」の先駆者でもあり、リスクが高すぎて他では資金調達ができない、若くて急激な成長の可能性があるベンチャー企業を対象に融資を行っていた。

従来の銀行は安定した利益がない企業や十分な担保を用意できない企業には融資をしないが、シリコンバレー銀行もこの隙間を狙った。

ベンチャー企業は大手銀行ではなくシリコンバレー銀行との取引を好むようになる。その大きな要因がシリコンバレー銀行が主催する招待制のイベントだった。スタートアップの創業者やベンチャーキャピタリスト(ファンドの投資家)が互いに知り合うことができ、すべての関係者にビジネスチャンスを提供する最高のコネ作りの場を提供していたのだ。ベンチャー企業が資金を調達すると、それをシリコンバレー銀行に預ける。これにより約27兆円もの預金が預けられていた。

しかし、この莫大な資金を有効に活用できないことがシリコンバレー銀行の最大の課題だった。従来の銀行のように住宅ローンのような一般的な商品もあったが、ベンチャー企業のCEOでもない限り、一般人はシリコンバレー銀行に口座を持たないため、ローンなどの貸出金は少なく、儲かるほどの融資をすることはできなかった。

そこで、シリコンバレー銀行は残った資金を利回りは低いが予想しやすいアメリカ国債に投資していた。

第2章 

〜金利が上がり、全てが崩壊 😱〜

シルバーゲート銀行とシリコンバレー銀行は預金の大半をアメリカ国債に入れていた。

過去10年間の金利がゼロに近い時に購入したので、預金からの収益はゼロに近かった。

しかし2022年前半から金利が急上昇。

問題 ①

アメリカ国債の金利は固定されているので金利が上がっても銀行への収益はゼロに近いまま。それに対して、顧客の預金は上昇した金利で利息を払う必要がある。

「出て行く額」が「入って来る額」を上回るという悪循環が発生。

問題 ②

現在の高金利、仮想通貨の価値の低迷、暗い経済の見通しでベンチャー企業は資金調達ができない、などの理由で銀行の預金が減少し始める。

預金の引き出しに対応するために銀行は保有してるアメリカ国債を売るが、ゼロに近いリターンの国債は大幅な割引でしか売れない(今、政府から直接購入すると金利3〜4%の国籍が買えるので金利がゼロに違い債権は誰も欲しがらない)。

問題 ③

・シリコンバレー銀行はMoody's(企業の健全性のランク)から格下げされる可能性が発表。

・現金の補充と経営状況の信頼を回復するために新株と優先株の売却を検討している事がニュースになる。

・アメリカ国債と新株の売却をしている事が悪い噂となり、ファンドはベンチャー企業に銀行から資金を引き出すように指示する。

預金していた顧客が一気に引き出しを要請したため、払い出す資金が足りず、アメリカ国債を売ってお金を補充するしかなかった。債券は満期を待てば購入した額の元本も戻ってくるはずだが、すぐに現金が必要だった銀行は債券を安値で市場で売るしかなかった。

シリコンバレー銀行は資産を全て売却し、負債を全額満たそうとすると発表した。同社の株式売買はストップさせられ、金曜日には規制当局が銀行を閉鎖した。

第3章 

〜末路 📉〜

アメリカ財務省、FDIC(預金の保険公社)、FRB(アメリカ中央銀行)は揃って「シリコンバレー銀行の預金者の全額還元を保証する」と発表した。

* アメリカで第29位の規模を誇るシグネチャー銀行も破綻して、同じく全額還元されると発表。

FDICはこの様な状況を対処するために作られた団体で緊急用の資金はあるが、通常は1口座につき約3,000万円の補償限度額がある。今回、破綻した銀行は主に法人口座を取り扱っていたので各口座の預金が補償額を大きく上回るが「2008年のような政府の救済は無い。国民の税金も触らない。」とFDICは宣言している。

3月13日(月)にはHSBC銀行がシリコンバレー銀行のイギリス法人を約160円で買収して預金を保護した(イギリス国内の顧客に限られる)。

他の銀行への飛び火が最大の懸念だが、他のアナリストが指摘するように、これは特殊な状況だと思われ、現時点では事態の範囲は限定的である。今回の破綻した銀行は全国展開ではなく特定の地域で営業しており、個人ではなく企業を対象としていた。

バンク・オブ・アメリカやJPモルガンのような大銀行は暗号通貨の崩壊ベンチャーキャピタルの厳しい環境など、これらの銀行が直面した業界リスクにはそれほどさらされていない。予測できないことがこの先起こるかもしれないが、現時点では2008年の金融危機の規模には遠く及ばず、レバレッジやデリバティブのような根本的な問題がほとんどない。

しかし、その一方でヨーロッパ株の指標となるストックス欧州600指数は3月15日(水)に約7%下落している。かつては名高かったが近年スキャンダル続きのクレディ・スイス(スイスで2番目に大きい銀行)は20%以上落ち込んで過去最安値を記録した。

もちろん仮想通貨も悪影響を受けている。

USDCというステーブルコインは「1USDC =$1」の為替レートが変動しないはずだが、11日に「1USDC =$0.90」まで落ちた。

*現在3月16日では「1USDC =$1」に回復している。

最終的にどの程度影響が広がるかについては、事態の推移を見守る必要があるだろう。

このシリーズはNewsweekやForbesなどの掲載経験、

加えて日経CNBCにアナリストとしての出演経験を持つ

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